自然の中で生き物を観察していると、時々本当に心を打つ、切ない状況を垣間見ることがあります。私が「もののあわれ」を感じるときです。
阿賀町の鹿瀬のキャンプ場で朝バードウォッチングをしていたとき、ふと道路の上に動いているものがありました。よく近づいてみるとミヤマクワガタのオスとメスの頭の部分でした。
アオバズクという昆虫を食べるふくろうの仲間に食べられたのでしょう。まだどちらも瀕死の中で生きている状態でした。
おそらく互いを求めて、灯火に着て出会ったところを襲われたのでしょう。
やっとお互いに出会って思いを遂げようとした刹那にフクロウに食べられたのです。
昆虫はたくさんの卵を産みますが、成虫まで大きくなり再び産卵できるものは数パーセントにも満たないのです。お互いの恋が成就するその瞬間に悲劇が襲ったわけです。これを見たとき、私はなんともいえない心の痛みを感じました。
私たちの目に見えない自然界の中で、そんなドラマが常に起こっているのです。
「一寸の虫にも五分の魂」。いにしえの人はどんな小さな虫にも、生きとし生けるものとしての哀れみ、同情を感じ、そして自分も生き物であるという共感を持ったのでしょう。
わが身を移すものとしての写し身。生き物に自分の気持ちを歌ったり、語りかけることを私たちの祖先はしてきました。それが民話や和歌、俳句、能、絵画など日本のさまざまな文化となって人たちの心の糧となってきたのだと思います。
私たちの命も絶対のものではありません。いつかは死をむかえる同じ生命として、また過去から未来に生命を引き継いでいくひとつの「命」としての共感を私たち日本人はもってきました。山、川、草、木そして名もなき生き物に寄り添うことこそが「もののあはれ」を感じる心なのではないでしょうか。
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