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【ニュース】新潟で幻のガを発見!

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本校の学生が新潟で63年ぶりとなるカバシタムクゲエダシャクを採集しました!

「フユシャク(冬尺)」とは

晩秋から早春に出現するシャクガ科のなかまで、日本には35種ほどが生息しています。最大の特徴としてはメスの翅(はね)が退化しており、とてもガには見えない姿をしています。今回発見したガはこのフユシャクの仲間で、「カバシタムクゲエダシャク」です。

カバシタムクゲエダシャクとは

1896年に外国人が日本で発見しましたが、詳しい採集地は不明で、1954年に新潟の海岸の砂防林内で再発見されました。フユシャク類の中では最も珍しい種で、愛好家の間では「幻のガ」と呼ばれています。現在でも全国で数地点でしか見つかっていませんが、最近では関東で毎年確認できるようになり、少しずつ生態が分かってきました。しかし、新潟では1958年を最後に見つかっておらず、絶滅したものだと推定されていました。

体験記事

カバシタムクゲエダシャクを見つけたのは環境教育科2年 西尾公兵くん。採集したのは自然環境研究科1年 熊谷朋泰くんです。

始まりは2021年の2月中旬のことでした。この日、西尾君は冬の昆虫を探しにきていました。何種類か昆虫を見つけたのですが、見たことがない素早いガらしきものが飛んでいるのに気が付きました。色が赤く、飛ぶ高度も高く、飛行速度も速かったため、もしかしてこれは「カバシタムクゲエダシャク」ではないか?とその時思ったそうです。しかしこの日は飛んでいる姿しか確認できませんでした。

▲昆虫を専攻し、特にガの採集と識別を中心に学んでいた西尾君(写真は実習中のもの)

帰って昆虫の先生に相談しましたが、先生はこれまでの経験から、「違う種と見間違えたのでは?」という判断をしました。なぜなら、カバシタムクゲエダシャクは、新潟で60年以上確認されておらず、しかも3月の中旬から4月の上旬にかけて発生する、ということがガ類会では定説となっていたからです。

西尾君は「見間違えだったのかな?」と思うと同時に、「いや、あれはやっぱりカバシタムクゲエダシャクだったはずだ!」と思い、赤い個体を確認した場所に再び行ってみることになりました。 3月上旬、この日は熊谷君も参加し、カバシタムクゲエダシャクを探しに行きました。

前回と同じ場所に来てみると、やはり赤いガが飛んでいるます。「あれは絶対にカバシタムクゲエダシャクに違いない!」と思いましたが、なにせ飛んでいる高さが高く、しかも素早い上に警戒心が強く、昆虫採集に慣れているはずの2人でもとても捕まえられるものではありません。

そこに!運よく熊谷君の前に、その赤い個体が止まってくれたのです!「え!!?これじゃない!?」と熊谷君はあわてて網をふり、網の中にその個体を捕まえることができました。

飛行機からの映像

熊谷「やったーーーーーー!!!」 西尾「ホワァァァァァァァ!!!??おお!!ついにやったか!?!?」

それはまぎれもなくカバシタムクゲエダシャクだったのです!!

今までの見てきたフユシャクに比べると大きさが別次元に感じたそうです。「やっぱりそうか!」「自分の目は正しかった!これで証明できる!」そんな思いが駆け巡りました。

帰って昆虫の先生に報告。先生も「にわかには信じられない!!どうして!?」と大変驚いていました。発見した環境や時期から、これまでの常識としては考えられなったそうです。また先入観があり、あのような場所にいるとは思ってもみなかったのです。

持ち帰った個体は西尾君が丁寧に展翅し、標本を作りました。※標本があることで生息が証明されます。

飛行機からの映像

▲新聞に掲載された写真

2人にインタビュー

西尾「捕まえた場所では、食草と言われているツルウメモドキが確認されていないので、メスがいる場所、発生場所は違う場所なのだと思います。もっと詳しい調査を行って、メスが発見できれば、その場所の保全対策もできるのではないでしょうか。」
西尾君は北海道の自然ガイドへの就職が決まっています。北海道でも昆虫同好会に入り、昆虫に関する活動を行っていきたいそうです。

熊谷「現在の環境を維持していきたいです。看板を立てたりすると逆に目立ってしまうので、ひっそりと保全していければと思います。僕はずっと新潟にいられるわけではないので、信頼できる愛好家の方に場所を公開して、これから調査、保全していく協力体制が必要だと思います。」

※こちらの記事は2021年3月時点での記事となります。
※詳しい採集地はお答えできませんのでご了承ください。